
今回は、要介護4のトキ子さん(仮名・90代)と、日々の介護を担っていたお嫁さんのお話です。
トキ子さんは、日常生活の多くに介助が必要な状態でした。
移動には車椅子を使い、排泄にも手助けが必要です。
介護を担うお嫁さんは、トキ子さんの日々の細かな変化にも本当によく気がつく方でした。
それだけに、介護サービスのちょっとした対応の違いに心が揺れ、傷ついてしまうことがあったのです。
デイサービスの送迎時に気になること
ある日、お嫁さんからこんなご相談がありました。
「昨日の送迎の職員さんは、その日のおばあちゃんの様子をいろいろ話してくれたんです。でも、今日の方はなんだかさっさと帰ってしまって……」
また別の日には、こんなお話も。
「この前は、おむつもきれいに交換して帰してくれたんですけど……今回はそうじゃなかったんですよね」
どちらも、日々の介護の中では起こり得る出来事かもしれません。
デイサービスの送迎時間帯は、職員にとっても一日のうちで特に慌ただしい時間です。
その日の人員配置や他の利用者さんの様子によっても、どうしても対応に差が出てしまうことがあります。
本来、おむつ交換などの必要な介助はきちんと整えてから送り出すのが基本です。
それだけに「交換されていなかった」と感じれば、ご家族が不安に思うのはごく自然なことです。
小さな対応の違いが気になってしまう理由
お嫁さんのお話を伺いながら、私はいつも感じていたことがありました。
それは、職員さんの対応そのものだけでなく、その態度から自分たちがどう思われているのかまで、気にされているということです。
介護をお願いしている立場だからこそ、職員さんの表情や言葉、ちょっとした対応の違いにも敏感になってしまう。
そして、「うちのおばあちゃんは、手がかかって迷惑なのかな」
「預かるのが大変だと思っているのかな」
そんなふうに、相手の態度を勘ぐって、送迎時の何気ない対応や、介護の仕方のちょっとしたことまで気になってしまうのです。
それは、単に細かいことが気になるという話ではありません。
お嫁さんの言葉の奥には、トキ子さんを大切に思う気持ちと、人に任せることへの葛藤があったように思います。
介護に関わる人同士が気持ちを共有すること
私もかつてデイサービスで働いていた経験があるので、現場にはさまざまな事情があることを知っています。
毎日同じメンバーとは限りませんし、日によってお体の状態が急変する方もいます。
認知症の症状で気持ちが落ち着かず、職員がつきっきりで対応しなければならない場面だってあります。
けれど、「現場が忙しいから」という理由で、ご家族の不安や疑問を置き去りにしていいわけではありません。
必要な介助が行われているか、本人の様子が家族に伝わっているか。
こうしたことは、安心してサービスを利用するためにも大切です。
行き違いを減らすためには、サービス担当者会議などの機会を利用して、本人や家族の思い、事業所側の状況を共有することも必要です。
お互いの立場や状況を知ることで、対応を見直したり、気持ちを理解し合えたりすることもたくさんあります。
ただ、担当者会議はいつでも開けるわけではありません。
日々の小さな引っかかりや揺れる気持ちのすべてを話し切れるわけでもありません。
ケアマネジャーだからこそ、聴けることがある
だからこそ、ご自宅に伺ったときは、まずはお嫁さんのお話にじっくり耳を傾けることから始めていました。
サービスへの不満や職員の対応について話が出たときも、すぐに事業所の事情を説明したり、どちらが正しいかを判断したりするのではなく、まずはその気持ちを受け止めること。
「そうだったんですね」
「それは気になりますよね」
そんなやり取りの中で、ご家族が少しずつ本音を話してくれることもありました。
もしかしたら、ご家族自身も、何に心を痛めているのか、うまく言葉にできていないことがあるのかもしれません。
一見するとデイサービスへの不満のように思えるお話も、丁寧に耳を傾けていくと、そこには家族としてのさまざまな思いが込められていることがあります。
ケアマネジャーは、介護サービスを調整するだけの存在ではありません。
本人や家族の思いに耳を傾け、必要に応じて事業所など関係する人たちにつないでいくことも、大切な役割の一つです。
介護を誰かに任せることに、申し訳なさを感じなくていい
介護サービスを利用することは、誰かに迷惑をかけているということではありません。
本人の暮らしを支え、家族が無理なく介護を続けていくためにも大切なことです。
だから、職員さんの顔色をうかがったり、必要以上に遠慮したりしなくていいのです。
介護を人に任せることは、悪いことでも、後ろめたいことでもない。
家族だけで頑張らなくていい。
もっと周りの力を借りていい。
そう頭ではわかっていても、簡単には割り切れないご家族の気持ちがあることも、支援する側は忘れずにいたいものですね。

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