林真理子さんの小説『8050』を読みました。
引き込まれる展開に、3時間ほどであっという間に読破してしまいました。
今や100万人時代と言われている引きこもり問題。
この本は、まさに「親のあるべき姿」を私たちに問いかけているような作品です。

有名中学に合格し、医師を目指していたはずの20歳の長男・翔太。
彼は7年間もの間、部屋に引きこもったまま過ごしています。
このままでは、親が80代・子が50代となり孤立する「8050問題」に突入してしまう。
焦る親たちはいったいどう行動するのか――。
親子の力関係と、向き合う覚悟
手を変え品を変え子どもにアプローチできるのは、力関係で親が優位なうちだけです。
それが逆転し、家庭内暴力を振るわれるようになったら本当の地獄が始まります。
警察を呼んだとしても、家庭内の内輪揉めには深く関与してくれません。
それどころか、110番したことで子どもとの関係がさらに悪化することさえあります。
夫婦で責任を押し付け合って喧嘩ばかりし、楽な逃げ道を探してしまう親たち。
子ども自身のことよりも「世間体」を気にして、本当に死ぬ気で子どもと向き合う覚悟を持てずにいる姿が描かれています。
かつて元農水省の事務次官が息子を殺害した事件は社会に大きな衝撃を与えましたが、私はあの父親が最後にようやく親としての責任を果たそうとしたのだと感じました(※もちろん殺害という行為自体を肯定しているわけではありません)。
この物語の父親も、最終的には逃げずにしっかりと子どもと向き合います。
苦しみ、悩みながら奮闘する父親の心情が丁寧に描かれていて、気づけば深く感情移入していました。
「ただ生きているだけで尊い」ということ
誰だって、最初から完璧な親になれるわけではありません。
子育てに間違いや失敗があったとしても、自分を責めすぎる必要はないのだと思います。
けれど、少しずつでも変わろうと努力することは大切です。
そのためにはまず、親自身が「人のせい」や「社会のせい」にするのをやめ、自分自身と向き合うことから始まるのではないでしょうか。
仕事の中で引きこもりを抱えるご家族と出会う機会が多いのですが、彼らを見ていても、私はいつもそう感じてしまうのです。
この作品では、引きこもりのきっかけ自体はいじめでしたが、本質はもっと深い「親子関係」にあります。
「将来は医者になってほしい」
そんな親の強い願いやプレッシャーが子どもにのしかかってしまうケースは少なくありません。
本当は、子どもはただ生きているだけで尊い存在のはずです。
曖昧さや弱さを許してあげられない環境では、強くて丈夫な心など育つはずもありません。
解決への希望と、心を揺さぶるラスト
重いテーマを扱った作品ですが、物語の最後はとても希望が持てる終わり方になっています。
作者の温かい優しさが画面越しに伝わってきて、胸が熱くなりました。
いじめ、不登校、引きこもり――。
現代社会が抱える、解決の糸口が見えにくい問題の本質を考えさせられる、まさに心を揺さぶられる傑作でした。
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