
親の介護が必要になったとき、これからの暮らしを一緒に考えてくれる存在として、ケアマネジャーを紹介されることがあります。
それまでケアマネジャーという名前も知らなかったという方もいらっしゃるでしょう。
ケアマネジャーとは、介護が必要になった方やご家族の相談に乗り、本人の希望や心身の状態に合わせて、必要なサービスの調整などを行う専門職です。
どんな人が担当になるのだろう。
親身になってくれる人だといいな。
そんな思いを抱く方もいらっしゃるのではないでしょうか。
けれど、紹介されたケアマネジャーがどんな人なのか、最初からわかるはずもありません。
事業所の状況によっては、担当者を自分で選べないこともあります。
私は、長年ケアマネジャーとして働いてきました。
その経験から思うのは、ケアマネジャーは、誰が担当になっても同じではないということです。
もちろん、ご本人やご家族が介護について十分な情報を持ち、自分たちで判断できる場合には、担当者の違いがそれほど影響しないこともあるでしょう。
でも、介護が初めてで、何をどうしたらよいのかわからないときはどうでしょうか。
ケアマネジャーの考え方や提案によって、選べる方法が変わったり、必要以上に遠回りをしてしまったりすることもあります。
私は、そんな場面を見てきました。
そこで今回は、私が考える「こんなケアマネジャーに担当してもらいたい」という話をしたいと思います。
これから担当者と関わる方にも、今のケアマネジャーに何となく不信感を抱いている方にも、ひとつの判断材料にしていただけたらと思います。
目の前の問題から逃げず、一緒に考えてくれる人
私がまず大切にしたいのは、考え方のいい人であることです。
ここでいう「考え方がいい」というのは、感じがいいとか、優しい言葉をかけてくれるとか、そういうことではありません。
目の前の問題をどう受け止め、どんな方法を考えようとする人なのか、ということです。
介護の現場では、思いどおりにいかないことがたくさんあります。
本人がサービスを嫌がる。
家族の負担が大きくなる。
体調が変化し、自宅での生活を続けることが難しくなる。
そんなとき、ケアマネジャーがどんな視点で考えるかによって、その先の選択肢は変わってきます。
例えば、高齢の方の体調がいつもと違うとき。
もちろん、受診が必要な状態であれば、医療につなぐことが欠かせません。
ケアマネジャーだけで判断せず、医師や看護師などに相談することも必要です。
ただ、何かあるたびに受診を勧めるだけで、その先を考えようとしないのでは、十分な支援とはいえない場合もあります。
高齢の方にとって、入院は身体機能や生活リズムが変わるきっかけになることもあります。
退院後、以前と同じように自宅で暮らせるとは限りません。
だからこそ、医療につなぐ必要性を判断するとともに、その後の生活まで見据えて考えることが大切なのです。
また、相談を受けると、すぐにサービスを増やそうとするケアマネジャーもいます。
以前、担当を引き継いだばかりの頃、ご家族からこんな電話をいただいたことがありました。
「ケアマネさんに言われたとおりにしたら、毎日ヘルパーさんが来るようになっちゃった。正直、落ち着かなくて嫌だわ」
サービスを増やせば解決するとは限りません。
本人がどんな暮らしを望んでいるのか。
家族は何に困っているのか。
サービスを利用することで、本当に生活しやすくなるのか。
そうしたことを考えたうえで、必要な支援を組み立てていくものだと思います。
自宅で最期まで暮らしたい。その思いをどう受け止めるか
例えば、ご家族が「できることなら、自宅で最期を迎えさせてあげたい」と話したとします。
在宅での看取りには、医療との連携や家族の負担、緊急時の対応など、考えておかなければならないことがたくさんあります。
本人の状態や家族の状況によっては、希望どおりにいかないこともあるでしょう。
だからといって、初めから「このケースは無理」と判断し、施設入所を前提に話を進めてしまったら、どうでしょうか。
家族が何を望んでいるのか。何に不安を感じているのか。どんな支援があれば、自宅での生活を続けられる可能性があるのか。
まずは、そこから考えていく必要があると思います。
自宅での看取りが正解だと言いたいわけではありません。施設での生活を選ぶことが間違いだとも思いません。
本人や家族の思いを出発点に、できることと難しいことを一緒に考える。
そして、実現が難しい場合にも、その理由をきちんと説明し、ほかの選択肢を考えていく。
専門職の判断を押しつけるのではなく、本人や家族が納得して選べるように関わることが、ケアマネジャーの役割だと思っています。
熱心だけれど、熱すぎない人
もうひとつ、私が大切にしたいのが、仕事に対する熱量です。
困っているときに力になろうとしてくれる人。必要な調整を後回しにせず、簡単には投げ出さない人。
そんな熱意は、やはり必要だと思います。
ただし、熱心なら誰でもいいというわけではありません。
自分の理想を実現したい気持ちが強すぎて、本人や家族の思いが置き去りになってしまうこともあります。
良かれと思って一生懸命に動いても、相手のペースを無視してしまえば、それが負担になることだってありますよね。
私がいいと思うのは、熱心だけれど、独りよがりではない人です。
難しい問題に直面したときには、ほかの専門職や事業所の仲間にも相談しながら、解決の糸口を探していく。
自分だけで何でも解決しようとせず、必要なときには周囲の力を借りることも大切です。
また、ケアマネジャー自身にも、守らなければならない生活や安全があります。
相手のために何でも引き受けることが、よい支援者というわけではありません。できることとできないことを伝え、適切な距離を保ちながら責任を持って支援する。
そんな熱意の持ち方がいいなと思います。
「今日は、こんなヘマをしちゃったの」と話せる人
ケアマネジャーとの信頼関係は、介護の大きな問題を相談するときだけに表れるものではありません。
現役時代、利用者さんやご家族から、日々いろいろな話を聞いてきました。
「ばあちゃんがデイサービスに行きたくないって言うんだよ」
そんな、日々気持ちが変わる親の介護の大変さを、そのまま話してくれることもあります。
ときには、
「今日はちょっと、こんなヘマをしちゃったの」
なんていう話も。
介護の相談というほどのことではないけれど、ちょっと聞いてほしい。話したら少し気が楽になる。
そんな何気ない日常の出来事を気軽に話してもらえることを、私はうれしく感じていました。
もちろん、ケアマネジャーは何でも解決できる人ではありません。相談内容によっては、別の窓口や専門職につなぐことも必要です。
それでも、家族が困りごとを一人で抱え込む前に、「ちょっと聞いてほしいんだけど」と声をかけてもらえる相手でありたいと思っていました。
介護の悩みは、大きな問題ばかりではありません。
毎日の小さな困りごとが積み重なり、気づかないうちに家族の疲れにつながっていくこともあります。
だからこそ、些細なことでも話せる関係には意味があるのではないでしょうか。
ただ、ここでひとつ、知っておいてほしいことがあります。
話しやすい人であることと、ケアマネジャーとして必要な仕事をきちんとできることは、別の話です。
親しみやすく、何でも話せる相手であっても、それだけで安心して任せられるとは限りません。
人柄だけではなく、法令を守り、専門職として責任を果たす人
私は、ケアマネジャーにとって、法令遵守は欠かせないものだと考えています。
介護保険制度には、居宅介護支援事業所が守るべき運営基準があります。
例えば、要介護の方を担当する場合、原則として月に1回以上の自宅訪問による面接とモニタリングの記録が必要です。また、ケアプランの説明や同意、利用者への交付、必要なサービス担当者会議なども、基準に沿って行わなければなりません。
もちろん、制度には例外や個別の条件もありますが、必要な手続きを個人の判断で省いてよいわけではありません。
こうした業務は、単なる書類仕事ではないのです。
本人の状態や生活の変化を把握し、必要な支援がきちんと行われているかを確認するためにあります。
それを怠れば、本人や家族が気づかないうちに、必要な支援が行き届かなくなるおそれもあります。
また、本人の意思や尊厳を守り、専門職として適切に行動することも当然求められます。
私は、倫理観や法令遵守の意識が欠けている人は、いくら人当たりがよくても、安心して任せられるケアマネジャーとはいえないと思っています。
優しい言葉をかけてくれるかどうかだけではなく、必要な仕事をきちんと行っているか。
ここは、ぜひ見てほしいところです。
担当者が不在でも、事業所として対応できること
ケアマネジャー個人の人柄や力量だけでなく、所属する事業所の体制にも目を向けてほしいと思います。
複数のケアマネジャーが在籍する事業所では、担当者が不在のときに、ほかの職員が利用者さんやご家族からの電話を受けることがあります。
そんなとき、担当者が誰なのか、どんな支援をしているのかがまったくわからなければ、必要な対応が遅れてしまうかもしれません。
もちろん、利用者さん全員の細かな情報を、職員全員が把握するのは簡単ではありません。
それでも、必要な情報を共有し、担当者が不在でも状況を確認して対応できる体制は大切です。
担当者が一人で支援を抱え込むのではなく、事業所全体で支える。
そうした連携も、利用者さんやご家族の安心につながります。
電話をしたときの受け答えや、担当者が不在のときの対応にも、事業所の姿勢が表れることがあると思います。
ケアマネジャーを選ぶとき、どこを見ればいい?
ここまで読んで、「では、実際にどこを見ればいいの?」と思われた方もいるかもしれません。
初対面で、その人の考え方や熱意を見抜くのは難しいものです。
けれど、日々の関わりの中で、次のようなところを見ていくと、少しずつわかってくることがあります。
- 本人や家族の希望を聞いてくれるか。 専門職として別の意見を伝える場合も、一方的に結論を押しつけず、希望を踏まえて考えてくれるか。
- 難しい問題にも向き合ってくれるか。 すぐに解決できなくても、ほかの方法を探したり、必要な専門職に相談したりしてくれるか。
- 必要なときに動いてくれるか。 話を聞くだけでなく、関係者への連絡や調整など、必要な対応につなげてくれるか。
- 些細なことでも相談できるか。 すぐに答えが出なくても話を受け止め、必要に応じて対応してくれるか。
- 認知症のある本人の気持ちにも目を向けてくれるか。 本人の言葉や表情、反応から気持ちを理解しようとし、家族の都合だけで支援を進めていないか。
- 必要な業務をきちんと行っているか。 ケアプランや訪問などの手続き、説明や連絡を適切に行い、専門職として責任を果たしているか。
ここで気をつけたいのは、希望どおりの対応をしてくれないからといって、すぐに悪いケアマネジャーだと決めつけないことです。
介護保険制度上できないこともありますし、本人の安全を考えて、希望とは違う方法を勧めなければならない場合もあります。
そんなときに、理由をわかりやすく説明してくれるか。ほかの方法がないか、一緒に考えてくれるか。
私は、そこを見てほしいと思います。
ケアマネジャーには、本人や家族の思いをくみ取り、専門的な判断をわかりやすく伝える力も必要です。
説明が足りないと、双方に悪気がなくても、少しずつ気持ちのすれ違いが生じてしまいます。
わからないことや納得できないことがあれば、そのままにせず、遠慮なく聞いてみてくださいね。
今のケアマネジャーに不信感があるときは
すでに担当者がいて、「何となく話がかみ合わない」「こちらの希望を聞いてもらえない」と感じている方もいらっしゃるでしょう。
そんなとき、まずは何に困っているのか、どうしてほしいのかを、できる範囲で具体的に伝えてみてください。
例えば、「もっと親身になってほしい」と伝えるよりも、「今後の生活について不安があるので、利用できるサービスやほかの方法を一緒に考えてほしい」と伝えるほうが、希望が伝わりやすいこともあります。
それでも状況が変わらない場合や、安心して相談できないと感じる場合には、担当者の変更を考えてもかまいません。
まずは事業所の管理者に相談してみましょう。事業所内での変更が難しい場合や、事業所そのものを替えたい場合には、地域包括支援センターや市区町村の介護保険担当窓口に相談する方法もあります。
新しい担当者の受け入れ状況などによって、すぐに変更できるとは限りませんが、相談することはできます。
また、必要な訪問や説明が行われない、相談しても必要な対応をしてもらえないなど、単なる相性の問題とは思えない場合には、いつ、何があったのかを整理しておくと、状況を説明しやすくなります。
ケアマネジャーを替えることは、わがままでも、申し訳ないことでもありません。
もちろん、担当者との関係を築いていくことも大切です。でも、気を遣うあまり、不安や不満をずっと我慢し続ける必要はありません。
これからの暮らしを支えてもらう相手だからこそ、安心して相談できる関係を大切にしてほしいと思います。
おわりに
ケアマネジャーを自分で選べないこともありますし、最初から相性がわかるわけでもありません。
だからこそ、実際に関わる中で、本人や家族の話をどう受け止めてくれるか、困ったときにどう向き合ってくれるかを見ていってほしいと思います。
私がいいなと思うのは、考え方に筋が通っていて、必要なときにはきちんと動いてくれる人。そして、熱心だけれど熱すぎず、こちらの気持ちやペースも尊重してくれる人です。
何より、介護について何かあったときだけではなく、「ちょっと聞いてほしいんだけど」と気軽に電話をかけられる。
そんな関係を築ける人なら、心強いのではないでしょうか。
介護は、これから先も続いていく日々の暮らしです。
その道のりを一人で抱え込まずに済むように、信頼できるケアマネジャーと出会ってほしい。
長年ケアマネジャーとして働いてきた私の、そんな思いを込めて書きました。
少しでも参考になれば幸いです。


コメント