病院からの退院が近づいているのに、自宅での生活は難しい。
これまで何とか自宅で介護を続けてきたけれど、家族だけで支えていくことに限界を感じている。
施設への入所を考えていても、すぐに受け入れ先が見つかるとは限りません。
そんなとき、「施設が決まるまで、ひとまずショートステイを利用しましょう」と提案され、行き先が確保できたことにほっとするご家族もいらっしゃるでしょう。
自宅での介護が難しい状況では、まず過ごせる場所を見つけることが先決です。
ご家族自身も、目の前の対応に精いっぱいかもしれません。
けれど、ショートステイは、施設入所までの時間を埋めるだけの場所ではありません。
利用中の過ごし方や体調の変化、利用できる日数など、あらかじめ知っておきたいことがあります。
今回は、施設入所が決まるまでの「つなぎ」として利用するケースを取り上げながら、ショートステイの仕組みや利用する際に知っておきたいことをお伝えします。

ショートステイは、どんなときに利用するサービス?
ショートステイは、在宅での暮らしを続けるために、ご本人の生活を支え、介護する家族の負担を軽減する役割を持っています。
正式には「短期入所生活介護」といい、特別養護老人ホームなどの施設に短期間宿泊し、食事や入浴、排泄などの介護を受けられるサービスです。
たとえば、次のようなときに利用されます。
- 介護する家族が休息を取りたいとき
- 冠婚葬祭や旅行などで、一時的に介護が難しいとき
- 家族の病気や入院などで、介護を続けられなくなったとき
- 退院後すぐに自宅で生活することが難しく、受け入れの準備が必要なとき
利用できる期間や受け入れの条件は、ご本人の状態や施設の体制、空き状況などによって異なります。
本来は在宅生活を支えるためのサービスですが、退院後の行き先が決まらず、施設への入所を待つ間に利用するケースも多いです。
ただ、ショートステイ先が決まれば、それで安心というわけではありません。
利用を始めてから戸惑うことがないよう、どのような点を確認しておけばよいのでしょうか。
ショートステイを転々とすることの負担
施設入所が決まるまでショートステイを利用する場合、利用期間や空き状況によって、別の事業所へ移ったり、いったん自宅に戻ったりすることがあります。
そのたびに、ご本人は新しい環境に慣れなければなりません。
ようやく慣れた頃に、また環境が変わる
部屋もスタッフも、一日の過ごし方も変われば、落ち着いて過ごせるようになるまで時間がかかることがあります。
ようやくスタッフの顔を覚え、安心して過ごせるようになった頃に、また別の施設へ移ることになれば、ご本人も戸惑うでしょう。
特に認知症のある方は、環境の変化によって不安や混乱が強まることもあります。
もちろん、場所が変わっても問題なく過ごせる方もいます。
大切なのは、環境の変化がご本人にどのような影響を与えるのかを考え、その方の状態に合った方法を探すことです。
また、施設が変わるたびに、持ち物の準備や移動の手配、情報の引き継ぎなども発生します。
ご本人だけでなく、ご家族にとっても、落ち着かない日々が続くことがあるのです。
施設入所までの利用を考えている場合は、どのくらいの期間を利用できそうか、次の施設へ移る際にどのような調整が必要になるのか、担当のケアマネジャーに確認しておきましょう。
もし、利用中に体調を崩したら?
もう一つ、利用前に考えておきたいのが、発熱や体調不良があったときの対応です。
ショートステイは医療機関とは役割が異なります。
看護職員が配置されている施設もありますが、対応できる医療処置や急変時の体制はそれぞれ違います。
体調の変化によっては、医療機関への受診や利用の中断が必要になることもあります。
特に、退院したばかりの方は、体調がまだ安定しないことがありますよね。
私がケアマネジャーをしていた頃、担当していた利用者さんが、ショートステイの利用中に37.5度以上の熱を出し、利用を中断することになったことがありました。
当時はコロナ禍だったこともあり、ご家族が急きょ対応しなければなりませんでした。
その方は退院後、そのままショートステイを利用されていたため、ご自宅にはベッドの準備すら整っていなかったのです。
急な帰宅が必要になり、ご家族は大慌て。
退院後の行き先が決まって、ひとまず安心していたところに、思いがけない事態が起きてしまいました。
ケアマネジャーも、起こり得る事態を想定しながら支援しています。
それでも、病気や体調の変化は、いつ起こるかわかりません。
だからこそ、利用を始める前に、次のような点を確認しておきたいところです。
- 発熱や体調不良があった場合、どのような対応になるのか
- 医療機関への受診が必要になった場合、誰が付き添うのか
- 急な帰宅が必要になった場合、家族が対応できるのか
ご家族だけで対応するのが難しい場合は、ケアマネジャーや施設と相談し、緊急時の対応を考えておきましょう。
ショートステイには利用日数や費用のルールがある
施設入所までの期間が長引いたり、急にショートステイを利用する必要が生じたりした場合、気になるのが利用できる日数と費用の問題です。
介護保険には、要介護度に応じて、1か月に介護保険サービスを利用できる支給限度基準額が設けられています。
この限度額はショートステイだけに適用されるものではありません。
訪問介護やデイサービスなど、ほかの在宅サービスの利用分も含まれるため、すでにほかのサービスを利用している方は、ショートステイに使える枠が少なくなることがあります。
限度額を超えて利用した場合、超えた分は原則として全額自己負担になります。
ただし、介護する家族の急な病気や入院など、やむを得ない事情でショートステイの利用が必要になることもあります。
通常の支給限度額では対応が難しい場合も、状況によっては例外的な取り扱いが認められることがありますので、利用できる方法がないか、ケアマネジャーを通じて市町村に相談してみましょう。
もう一つ、知っておきたいのが利用日数のルールです。
短期入所生活介護は、原則として連続30日までの利用となっています。
31日目は介護保険の給付対象とならず、全額自己負担になります。
その後も連続して利用する場合には、介護保険上の日数の数え方に注意が必要です。
また、連続利用の日数とは別に、要介護認定の有効期間のおおむね半数を超えないように利用するという目安もあります。
ただし、こちらも一律に超えてはいけないというものではありません。
必要と認められる事情があれば、半数を超える利用が可能なこともあります。
自治体によって必要な書類や確認手続きが異なるため、該当しそうな場合は、早めに確認しておきましょう。
このように、利用日数や費用には制度上のルールがありますが、事情によっては例外的な取り扱いが認められることもあります。
制度の枠内での利用が難しそうなときも、すぐに諦めず、今の状況でどのような方法が取れるのかを考えていきたいですね。
施設入所を考えるとき、忘れたくないこと
ショートステイを利用しながら施設への入所を目指す場合、受け入れ先を探すことと同時に、入所した後の暮らしにも目を向けておきたいものです。
私が大切にしたいと考えているのは、次の2つです。
① 施設探しは、複数の選択肢を持って早めに進める
希望する施設になかなか空きが出ない場合は、条件の幅を広げて、複数の施設に申し込むことも一つの方法です。
ただし、空きがあることだけで決めるのは避けたいところです。
受け入れ可能な医療処置や介護体制、費用、生活環境などは施設によって異なります。
ご本人の状態に合っているか、どのような生活を送れそうかを確認しながら、候補を探していきましょう。
② 入所できることと、落ち着いて暮らせることは別
ようやく入所先が決まっても、ご本人の気持ちが追い付いていないと、新しい環境になじめず、不安や混乱が強くなることがあります。
私のケースでも、施設から「ご自宅のほうが落ち着いて過ごせるのではないでしょうか」と言われ、ご家族が途方に暮れてしまったことがあります。
施設に入ることがゴールではありません。
その場所で、ご本人がどんな毎日を送れるのかも考えておきたいのです。
これまで、どんな暮らしをしてきたのか。
何を大切にしてきた人なのか。
そして、これからどんな場所で過ごしたいと思っているのか。
もちろん、ご本人の希望をすべてかなえることが難しい場合もあるでしょう。
ご家族にも、それぞれの事情や限界があります。
それでも、できる範囲で親の気持ちを聞いておくことは、迷ったり、思い悩んだり、いつか振り返ったりしたときに、ご家族自身の心を支えてくれることもあるのではないでしょうか。
おわりに
ショートステイは、在宅生活を支える大切なサービスです。
施設入所までの一時的な受け皿として、助けられるご本人やご家族もいらっしゃいます。
利用できる場所が見つかったときは、まずほっとしていいのだと思います。
そのうえで、利用中の過ごし方や体調を崩したときの対応、日数や費用のこと、そして施設に入った後の暮らしについても、少しずつ考えておく。
介護は、いつも思い描いたとおりに進むわけではありません。
親の思いも、家族の事情も、どちらも簡単には割り切れないことがあります。
それでも、今できることを考えながら、一つひとつ選んでいく。
すぐに答えが出なくても、選択肢や備えがあることで、思いがけない事態に直面したときにも、次の一歩を考えやすくなるはずです。
悩んだり迷ったりするのも、それだけご家族を大切に想っているからこそなのだと思います。
ご自身に優しく、無理のない選択をしていけますように。
ショートステイの利用や施設探しで迷ったとき、相談相手となるケアマネジャー。
これから担当者を探す方や、今のケアマネジャーとの関係に悩んでいる方は、こちらの記事も参考にしてみてください。


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