
親の介護をしていて、なんだか苦しい、モヤモヤする……。
そんな気持ちを抱えていませんか?
今回は、要介護3のウタさんと、一生懸命お世話をする娘さんの姿から、介護の裏に隠されたお互いの切ない本音や関係性の見直し方についてお話しします。
完璧すぎるお世話と、娘さんの切ない胸のうち
今回は、要介護3の92歳のウタさん(仮名)と、その介護をされていた娘さんのお話です。
娘さんは本当に気が利く方で、身の回りから日々の細かなことまで、お母様が不自由しないよう本当によく気を配っていらっしゃいました。
側で見ている私からしても、少し完璧すぎるくらい、かいがいしくお世話をされていた姿が印象に残っています。
そんなある日、娘さんからぽつりとこんなご相談をいただいたのです。
「最初の頃は、母も『ありがとう』って言ってくれたんです。でも最近は、こんなにお世話しているのにありがとうも言わなくなって、文句ばかり言うようになって……」
その表情には、積み重なった疲れと、やりきれない思いがにじんでいました。
実は、こうしたすれ違いは、介護の現場では決して珍しいことではありません。
ケアマネとして働いていた頃、私もたくさんのご家族の間でこの切ない空気を感じてきました。
言葉の裏にある「切ない本音」
お世話をされるようになったばかりの頃は、自分のために動いてくれる家族の姿に、誰もが感謝の気持ちでいっぱいになります。
けれど、それが毎日の「当たり前」になってくると、少しずつ心境が変わっていきます。
ありがたいという気持ちの奥から、申し訳なさや情けなさ、思うように動かないもどかしさが大きくなっていくのです。
「本当は、自分でできるようになりたい」
「家族に迷惑をかけずに過ごしたい」
そう願っているのに、現実にはできない。
どれだけ頑張っても、元のようには戻れない。
そんなやるせない思いを抱えたまま、先回りして手厚く世話を焼かれると、その優しさがいつしかプレッシャーになってしまうことがあります。
「お願いだから、もうそんなに世話を焼かないで」
「私のことばかり見つめないで」
「もう少し放っておいてほしい」
そんな言葉にできない本音が、ぶっきらぼうな態度や文句という形で表に出てしまうこともあるのです。
ウタさんの場合も、娘さんに辛く当たるのは意地悪ではなく、その奥には、表現しきれない苦しさが隠れていたように思います。
介護が苦しくなったら、親との距離を見直してみる
親の介護をしていて苦しい、なんだかモヤモヤする……もしそう感じているなら、それはお互いの関係性を見直す大切な時期なのかもしれません。
親の介護をしていると辛くなる。
少し離れたい。
もっと自分の時間がほしい。
そう思っているのに、いざ離れようとしても離れられない。
「私が見ていなければ」
「私がやってあげなければ」
「他人に任せるのは心配」
そんな気持ちが出てきて、結局また自分で抱え込んでしまう。
でも、ここで一度、自分の心を覗いてみてほしいのです。
「私がいなければ、この人はダメ」本当にそうでしょうか?
少し厳しいことを言うようですが、その思いの中に、傲慢さや自意識過剰な部分はないでしょうか。
自分がいなければ何もできない。
自分が一番分かっている。
自分が何とかしてあげなければ。
そんなふうに思っているのだとしたら、それは相手のためだけではなく、自分自身の思いを満たしている部分もあるのかもしれません。
「私がいなければダメ」という思いの裏には、自分が必要とされていたい気持ちや、自分が世話をすることで安心したい気持ちが隠れていることもあります。
それも、ひとつのエゴです。
親を大切に思う気持ちと、自分がいなければという思いは、似ているようで少し違います。
もちろん、本人の安全や生活を守るために必要な介護はあります。
でも、それ以上のことまで自分が背負い込んでいないか、一度考えてみてほしいのです。
親のためと思ってしていることが、実は自分の思い込みや執着からきていることもある。
そこに気づくことが、とても大切なのです。
まずは「自分を満たす時間」から
関係性を少しずつほぐしていくために一番大切なのは、介護する側が「自分自身の人生を楽しむこと」に目を向けることです。
お世話が生活の中心になり、相手のことばかり考えていると、自分の時間も楽しみも、いつの間にか後回しになってしまいます。
でも、どうか自分を満たしてあげることを忘れないでください。
好きなことをする時間を持つ。
友人と楽しく出かける。
ゆっくりとお茶を味わう。
そんな自分だけの時間を過ごすことは、決してわがままでも自己中心的なことでもありません。
そのためにも、今、ひとりで抱えているお世話を、少しずつ手放してみませんか。
デイサービスを利用する日を増やしたり、ショートステイを活用したりするのも良いでしょう。
思い切って、必要最低限のお世話だけにしてみる。
それが難しければ、今まで自分がしていたお世話を半分くらいにするつもりで、少しずつ手を離してみる。
それくらいの気持ちで、肩の力を抜いてほしいと思うのです。
介護する人にも、自分の人生があります。
親のために生きるのではなく、自分の人生を大切に歩みながら、親との時間も味わっていく。
現場を離れた今だからこそ改めて感じますが、お互いに少し息のできる「余白」を持つことが、長く優しい時間を紡ぐヒントになるのだと思います。
今もし、親の介護に向き合う中で心が少し疲れてしまっていたら、立ち止まってご自身の心にこう問いかけてみてください。
「私は、本当にこの人のためにしているのだろうか?」
がんばり屋さんのあなたが、ほんの少しでも肩の荷を下ろせますように。

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